瀬戸内みなみ『にっぽん猫島紀行』 [地方の未来]
【週末の1冊 その1】 瀬戸内みなみ『にっぽん猫島紀行』(イースト新書 2017年)
別に自宅で飼おうとは思いませんが、小動物は好きですよ。
通勤の行き帰りや、買い物や散歩の途中で出会う、猫・犬・小鳥など大好きです。
特に猫は大のお気に入りで、通りがかりに偶然見かけたりすると、思わず心がほっこりしますね。
そんな「薄ぼんやりとした猫好き」である私が、本屋の新刊書コーナで手に取ったこの本を即購入した理由は一つ。
私の生まれ故郷が採り上げられている!
正確に言えば、行政上、生まれ育った町に属する島なんですけどね…
私は大学に進学するまで瀬戸内海沿岸の港町で育ったのですが、その沖にあるいくつかの島のひとつ、そこが最近「猫島」として話題になっていると、なんとなしに知ってはいましたけど、こうして書籍に採り上げられたとなると、これは買わざるを得ません。
どの島なのかは内緒ですけれど…
この本の舞台となる猫島10の内、5島が瀬戸内海の小島なのはなんとなく分かります。
だって、温暖だし、台風の被害も比較的小さな地域だし、すぐ近くに魚はいるし、猫にとって棲みやすいのだと思いますよ。
釣り人が通りかかった猫に釣った魚を気前良く分け与える、そんな光景を故郷の海辺で何度も見かけたことがあります。
さて、著者の瀬戸内みなみさんによると、「猫島」とは「明確な定義はないが、徒歩で一周できるくらい小さくて、住民の数よりも猫が多いといわれるような島を指すことが多い」とのこと。
そして、そんな小さな島に棲む猫との出会いを求めて、国内のみならず海外からも観光客が続々と訪ねてきている!
最も有名なのは愛媛県・青島でしょうか。
この本は無類の猫好きである著者が、北は北海道・天売島から、南は沖縄県・竹富島まで、10の猫島を訪れ取材したルポタージュです。
巻頭カラー4ページのカラーグラビアから始まって、本文の至るところに現地で著者が撮影した猫の写真がページを飾っている、まさに猫づくしの本ですね。
猫好きの方にはお薦めの一冊です。
ただ、著者の視線は猫が暮らす島が抱え込んでいる厳しい状況についても丹念に取材しています。
むしろ、日本各地の猫島が抱えている様々な深刻な問題、そこに充てた記述の方が多いかもしれません。
たとえば、私が幼少の頃から海水浴や遠足や臨海学校などで度々訪れていた島は、昭和30年には1300人以上いた人口が、今は100人を切ってしまっています。
そして平均年齢は80歳前後。
このまま人口減少が続いていくとしたら、いったい誰が島の猫たちの世話をするのでしょうか?
少子高齢化と過疎化と地場産業の衰退が、猫と人の共棲の場を脅かしています。
同じく過疎化と人口減少に悩む中間山村地帯と比べて、アクセス面からも離島は急速に限界集落化が進んでいると言えるでしょう。
また、そのすぐ近くにある島。
この島では猫の大量死が発生してしまいました。
毒殺説もありますが、流行病による大量死説もあり真相は不明です。
そのため猫の数が3分の1ほどに減ってしまったそうです。
そして「可哀相な猫たちを救え!」と乗り込んで来た動物愛護団体。
善意で行ってはいるんだけど、島民たちとの意思疎通が上手くいっているとは言いがたいようです。
詳細はここでは記しませんし、私見も述べません。
ご興味のある方は、ぜひ本書を読んでみてください。
なんだか歯切れの悪い感想になってしまってゴメンなさい。
読んでいて陰鬱たる気分になった方もおられるかもしれません。
多くの猫島に「猫と人のより良き共棲」を求めて尽力されている方々が少なからずおられることに、一縷の希みを託しつつ、この拙い文章を終えます。
瀬戸内みなみ 著『にっぽん猫島紀行』
出版社 イースト・プレス
初版発行 2017年6月8日
ISBN 9784781650876
出版社公式サイト
別に自宅で飼おうとは思いませんが、小動物は好きですよ。
通勤の行き帰りや、買い物や散歩の途中で出会う、猫・犬・小鳥など大好きです。
特に猫は大のお気に入りで、通りがかりに偶然見かけたりすると、思わず心がほっこりしますね。
そんな「薄ぼんやりとした猫好き」である私が、本屋の新刊書コーナで手に取ったこの本を即購入した理由は一つ。
私の生まれ故郷が採り上げられている!
正確に言えば、行政上、生まれ育った町に属する島なんですけどね…
私は大学に進学するまで瀬戸内海沿岸の港町で育ったのですが、その沖にあるいくつかの島のひとつ、そこが最近「猫島」として話題になっていると、なんとなしに知ってはいましたけど、こうして書籍に採り上げられたとなると、これは買わざるを得ません。
どの島なのかは内緒ですけれど…
この本の舞台となる猫島10の内、5島が瀬戸内海の小島なのはなんとなく分かります。
だって、温暖だし、台風の被害も比較的小さな地域だし、すぐ近くに魚はいるし、猫にとって棲みやすいのだと思いますよ。
釣り人が通りかかった猫に釣った魚を気前良く分け与える、そんな光景を故郷の海辺で何度も見かけたことがあります。
さて、著者の瀬戸内みなみさんによると、「猫島」とは「明確な定義はないが、徒歩で一周できるくらい小さくて、住民の数よりも猫が多いといわれるような島を指すことが多い」とのこと。
そして、そんな小さな島に棲む猫との出会いを求めて、国内のみならず海外からも観光客が続々と訪ねてきている!
最も有名なのは愛媛県・青島でしょうか。
この本は無類の猫好きである著者が、北は北海道・天売島から、南は沖縄県・竹富島まで、10の猫島を訪れ取材したルポタージュです。
巻頭カラー4ページのカラーグラビアから始まって、本文の至るところに現地で著者が撮影した猫の写真がページを飾っている、まさに猫づくしの本ですね。
猫好きの方にはお薦めの一冊です。
ただ、著者の視線は猫が暮らす島が抱え込んでいる厳しい状況についても丹念に取材しています。
むしろ、日本各地の猫島が抱えている様々な深刻な問題、そこに充てた記述の方が多いかもしれません。
たとえば、私が幼少の頃から海水浴や遠足や臨海学校などで度々訪れていた島は、昭和30年には1300人以上いた人口が、今は100人を切ってしまっています。
そして平均年齢は80歳前後。
このまま人口減少が続いていくとしたら、いったい誰が島の猫たちの世話をするのでしょうか?
少子高齢化と過疎化と地場産業の衰退が、猫と人の共棲の場を脅かしています。
同じく過疎化と人口減少に悩む中間山村地帯と比べて、アクセス面からも離島は急速に限界集落化が進んでいると言えるでしょう。
また、そのすぐ近くにある島。
この島では猫の大量死が発生してしまいました。
毒殺説もありますが、流行病による大量死説もあり真相は不明です。
そのため猫の数が3分の1ほどに減ってしまったそうです。
そして「可哀相な猫たちを救え!」と乗り込んで来た動物愛護団体。
善意で行ってはいるんだけど、島民たちとの意思疎通が上手くいっているとは言いがたいようです。
詳細はここでは記しませんし、私見も述べません。
ご興味のある方は、ぜひ本書を読んでみてください。
なんだか歯切れの悪い感想になってしまってゴメンなさい。
読んでいて陰鬱たる気分になった方もおられるかもしれません。
多くの猫島に「猫と人のより良き共棲」を求めて尽力されている方々が少なからずおられることに、一縷の希みを託しつつ、この拙い文章を終えます。
瀬戸内みなみ 著『にっぽん猫島紀行』
出版社 イースト・プレス
初版発行 2017年6月8日
ISBN 9784781650876
出版社公式サイト
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