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細野晴臣(編)『F.O.E MANUAL』 [サブカルチャー]

えーっと、毎週日曜日は私の内に秘めたる「狂想的部分」を解き放つことにします。

他人の「壊れた姿」なんて見たくも知りたくもないという健全な皆様におかれましては、このブログの日曜投稿分はスルーしていただければ幸いです。

で、まず思い立ったのが「コミケで頒布されている薄い本、もしくは研究本」でも、多分採り上げられたことのない「超ニッチなサブカル分野」の紹介。

でも、ブログ開始早々、あまりに需要無さ過ぎる私道の路地の裏道の奥にあるわき道のさらに奥に続く畦道のさらに続く細道のどん詰りのようなジャンルのお話ししても、誰もついてこれないと思いますので、今回だけは「超有名人の知られざる問題作」について記します。

それは、細野晴臣(編)『F.O.E MANUAL』(扶桑社、1986年)です!

え!、そんな本知らない?

まあ、そうでしょうね。

細野晴臣さん公式サイトの著作リストにも、Wikipediaの「細野晴臣」にも掲載されていませんから。

かの国立国会図書館オンライン・データベースですら、刊行30年以上経った2017年2月6日になってようやく「情報資源を採取・保存した」という、極めてレアな本ですからね。

奥付から基本的な書誌情報を抽出してみましょう。

 責任監修 細野晴臣+後藤繁雄
 執筆協力 浅田彰+大原まり子
 発行所  株式会社扶桑社
 昭和61年6月24日 初版第1刷発行
 [コピーライト]H・HOSONO 1986
 ISBN 4-89353-091-7

著作権マーク以下の記載から判断して、これは紛れも無い「細野晴臣さんの著作物」ですよね?

じゃあ何故、公式サイトからも「なかった事」にされているのか?

まず、「F.O.E」についてご説明しましょう。

「F.O.E」は、細野晴臣さんがYMO散開後移籍したテイチク株式会社と業務提携して設立したレコードレーベル「ノン・スタンダード(NON-STANDARD)」からデビューした音楽ユニットです。

「F.O.E」は「フレンズ・オブ・アース(Friends of Earth)」の略称であるとともに、「フレンド・オア・フォゥ(FRIEND or FOE)」でもあるとか、ないとか…(笑)

英語の「foe」は「敵」を意味しますし、「友と敵」のダブル・ミーニングなんでしょうね。

細野さんと元Interiorsの野中英紀さんを中心に結成されたユニットです。

越美晴さん、サンディーさん、そしてファンクの帝王ジェームス・ブラウンさん、メイシオ・パーカーさんなどがゲスト参加されています。

活動期間に関しては諸説ありますが、主要な活動歴は1985年後半から1986年初頭までに集中しています

細野さんご自身が「O.T.T.(Over The top)」と命名した機械的な細かいビートを駆使して、時にはファンクに近いドライヴ感あふれる音楽を展開したユニットですね。

この1980年代半ばに短期間存在した音楽ユニットの「公式マニュアル本」が『F.O.E MANUAL』です!

で、この本なんですけど、良く言えば80年代半ば当時の「文化的先鋭性」を表明した尖がった本。

悪く言えば、「限りなくトンデモ本に近づいたオシャレな文化左翼のテロ宣言書」!

内容について詳しく触れませんが、私なりに一言で要約すれば「バイオ・ケミカルを含むハイテクで武装した都市の文化的遊牧民に向けた抵抗・蜂起への呼びかけ」です。

ビート世代以降のアメリカ対抗文化とフレンチ・ポストモダニズム、それらにカルトぽい東洋的瞑想・身体技法と電子神秘主義・初期サイバーパンクとを混ぜ合わせたごった煮。

一例だけ挙げておきますね。

58ページから始まる「F.O.Eによる東京浄化戦争計画」

最初の一文が、

「F.O.E. ARMYの第一のターゲットは、「こじゃれた」ギャルでうずめつくされた原宿の歩行者天国、原宿駅にナパーム弾を、そしてラフォーレと竹下わきに原爆を投下」
(註.これは1986年刊行の著作からの引用です。決してブログ主個人の「犯行予告」ではありません!)

以下、表参道→青山通り→渋谷駅周辺→日赤通り→霞町→六本木総攻撃→神宮前界隈のクリエーター・ゾーンを攻撃と続きます…
(註.これは1986年刊行の著作からの要約です。決してブログ主個人の「犯行予告」ではありません!!)

で、最後に「東京浄化も夢じゃない」で締め括られています。
(註.これは1986年刊行の著作の紹介です。決してブログ主個人の「犯行予告」ではありません!!!)

テロを示唆? 推奨? 煽動?

イヤハヤ南友、凄いですよね! 逝っちゃってますよね?

この辺りの記述は、関西で生まれ育ち当時京都大学人文研助手だった浅田さんの、成り上がりものが跋扈するキッチュで薄っぺらい文化的魔界・東京への恨み辛みが込められていると考えるのは、うがち過ぎですかね?

それはともかく、こんな文化的怨念が込められたトンデモ本を自分の著書として認めたくないのは、誰だって理解できますよね。

この本が刊行されて9年後、都心で大変痛ましい地下鉄サリン事件が起こりました。

この本で言及されている銃器・弾薬・原爆ではなく、薬物でのテロ事件です。

この点からも、いくらなんでも、この本が9年後の都心で起きた痛ましい事件の手引きになったとは言えないでしょう。

ただ、本全体から漂う「薬物使用による現実からの脱却」の肯定。

そして、高度資本主義の文化を享受しつつ離脱を図る知的な選民こそが資本主義の閉塞から逃れうる道を提示できる、との文化的エリート主義。

う~ん、なんだかなあ~

初版刊行から30年以上経って再読し、決してこれらに耽溺してはならないと改めて決意した正月明けです。


【補足】本書5ページからの引用

「なおマニュアルのテキストの内容については、細野晴臣のテーマにもとづいて京都大学人文研助手の浅田彰が総監修を行い、実際的効能に配慮した。」

上記を読む限り、細野さんは「名義貸し」しただけで、実質的には浅田彰さん・大原まり子さん・後藤繁雄さんの著作なんでしょうかね?


【補足2】家政婦は見たPart3「細野晴臣氏の黒歴史? FOEを検証する」より

「FOEについては、実は資料らしいものがほとんど残されていない。日本武道館公演の豪華パンフレットや、浅田彰+大原まりこが執筆した『FOE MANUAL』なる単行本も出版されてはいるが、これらは音楽を説明するための機能を果たしたものではない。後者は「ホール・アース・カタログ」のパロディのような装丁だったが、私のような音楽バカで生真面目な性格の人間からすると、その内容はまるで「ファンを煙に巻いてるんじゃないの?」という印象すらもったほど。メンバーが積極的にグループを語った発言も当時から読んだこともなく、再発CDのライナーノーツでも、事実関係をつまびらかにするのが限界だったようだ。」
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