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山村明義『勝つための情報学』(2) [知の技法]

【週末の1冊 その2(中編)】山村明義『勝つための情報学:バーチャルからリアルへ』(扶桑社新書、2019年)


*情報の「三角測量法」(承前)

情報の「三角測量法」とは、ジャーナリストの山村明義さんが提唱される、「当事者」から得た一次情報を起点にして、これに見方の異なる「対立者」と事情に詳しい「第三者」から得た情報を加えて吟味・精査していく調査方法のことです。

この方法はジャーナリズム・メディア関係者のみならず、研究者やビジネスマンなどにも応用可能な汎用性の高い「知の技法」であると思います。

対面調査だけでなく、文献中心の調査にも利用できるのです。

以下は私なりのまとめです。

ある理論・学説・モデルがあるとしましょう。

それらの妥当性・普遍性・適用可能性などを検討する際に、まず必要なことは、当の理論・学説・モデルを世に出した「提唱者」の主要な著作を充分に読み込むことです。

日本のアカデミズムの場合、当の理論・学説・モデルを輸入・紹介している主要な論者・研究者の代表作ということになりましょうか。

最終的に賛同するにして批判するにしても、主唱者の一次文献をその考え方の背景まで読み込むことは必須です。

世の中、特にネットの言論空間においては、この基本的な作業すら行わずに、解説本1・2冊だけ読んで、すべてを理解したかの如く声高に主張されておられる方を散見します。

中には解説本1・2冊どころか、伝聞情報だけで語っている方もおられますね。

大変嘆かわしい限りです。

次に必要なのは、その理論・学説・モデルを批判している学者・研究者・批評家の主著を読むことです。

最新学説の場合は、これまでに主唱者を批判し続けていた人たちが、新しい学説等に対してどのように反応しているか情報収集することになりますね。

このようにして主唱者と批判者、相互の主張を比較検討して問題点を主要な争点をあぶり出します。

そして、ここからが重要です。

山村さんも、「情報の形を「三角形」にすること」で、「より正確でより「固い情報」にできる」と書かれておられます。(56頁)

ただ、言論の世界において「信頼できる第三者情報」を取得するのはとても困難です。

当該ジャンルについて、できる限り公平かつ客観的に物事を説明している論者を見つけるのは難しいからです。

そもそも、学派・学閥を超えて公正明大な立場から発言している研究者が存在するのかという問題がありますから。

だから当該ジャンルの主要な学説・学派について、日頃からクロスチェックしておいて、この問題ならば信頼性が高いと判断できる「参照点」たる人物を何人か見出しておく必要があります。

つまり日々の研鑽が重要なんですね。

「主唱者」「批判的論者」「客観性において信頼性の高い第三者」、これら三つの立場からの主要な言説を比較検討することが肝要なのです。

(明日に続きます)←まだ続くんかい!


山村明義 著『勝つための情報学:バーチャルからリアルへ』
出版社 扶桑社
初版発行 2019年1月1日
ISBN 9784594081317
出版社公式サイト
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594081317
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山村明義『勝つための情報学』 [知の技法]

【週末の1冊 その2(前篇)】山村明義『勝つための情報学:バーチャルからリアルへ』(扶桑社新書、2019年)


この原稿を四国の実家に帰省する途中の新幹線の中で書いています。

昨年末に購入したノートPCで。

いや、本当に便利になったものですね!

ひと昔前なら、新幹線の中でインターネットに接続して、情報収集しながら原稿を書くなんて、よほど恵まれた人たちのみが享受できる情報環境だったのですが、今や実売価格数万円の超安物PCでも簡単にできちゃいます。

いつ・いかなる場所でもネットに接続できて、好きなだけ情報を得ることができる。

なんて素晴らしいことじゃないですか!!

でも、物事には「良い面」ともに「悪い面」も伴うのは、この世の常。

ついさっきも、新幹線車両の電光掲示板に、「子供が平日にネットにアクセスできる時間を1時間に制限」する法案を、どこかの県議会が審議するとかというニュースが流れていました。

私たちは毎日、大量の情報に囲まれながら生き、自分では意識しない内に膨大な情報を受け取っています。

新聞・雑誌・テレビなどのオールド・メディアに加え、誰でもが気軽に情報を発信し享受うるインターネットの普及により、私たちが人類史上かつてないほどの膨大な量の情報の中で生活しています。

たいへん困ったことに、それらの中には、ちょっと見には真偽の判断がつかない「誤報」や「フェイクニュース」などが含まれています。

では、高度情報社会の利便性を享受しながら、虚偽の情報に騙されないようにするには、一体どうのようにすればよいのでしょうか?

ジャーナリストの山村明義さんが昨年初めに出された『勝つための情報学』は、日々接している情報の中から真贋を見極めるための具体的な方法が幾つも提示されています。

山村さんは紙媒体のメディアに約5万本の記事を書いてきたのですが、刑事・民事ともに名誉毀損罪などで告訴されたことがないとの。
(ただし、一度だけ出版社が無断で書き加えた内容で訴えられたことはある)

この本の第2章は、山村さんが日々実行している「情報の安全確認」が詳細に説明されています。

 ・「い・な・か・も・ち」の原則
 ・「6W2H1D」
 ・「三角測量法」

すべてを説明しては著作権侵害になりかねないので、ここでは「三角測量法」の簡単な説明のみにとどめ、その後は上記の方法に通じる私自身の情報選択法を提示いたします。

*情報の「三角測量法」

「三角測量法」とは、人工衛星・GPSなどがなかった時代に行われていた目視による測量法のことです。

「「三角測量法」とは、80年代まで実際に使われた、本来は山や建物などの測量法です。三つの「既知の点」から線を引き、「未知の点」を割り出していく優れた測量法でした。
 いまでは宇宙や上空からそれを見る「衛星測量システム」に取って代わられていますが、科学的原理としても、より規模の大きな三角形を最初に測定することで、「測量誤差」を最小化でき、三角形の内部の点の位置をより正確に特定できる方法なのです。」(52頁)

この優れた方法を「情報の世界」に当てはめてみるのが、情報の「三角測量法」なのです。

情報の世界においては、「当事者」・「対立者」・「第三者」が三点となります。

まず起点となるのは、一次情報たる「当事者情報」。

これに見方の異なる「対立者」と事情に詳しい「第三者」から得た情報を加えて吟味していく調査方法なのです。

出発点となるのは、あくまでも当事者から得た「一次情報」です。

一次情報がどこまで信用できるのか、細部に至るまで検証するために、対立者と第三者から得た情報をもって精査していく。

この地道な作業の繰り返しが肝要なのです!

(明日に続く)


山村明義 著『勝つための情報学:バーチャルからリアルへ』
出版社 扶桑社
初版発行 2019年1月1日
ISBN 9784594081317
出版社公式サイト
https://www.fusosha.co.jp/books/detail/9784594081317
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